パスワード管理の基本|「使い回し」が一番危ない

パスワード管理の基本|「使い回し」が一番危ない
使い回しは、
一番危ない。
PASSWORD
「同じパスワードを、あちこちで使っていませんか?」
使い回しは事故のもと。安全な管理の基本を身につけましょう。
この記事は、事務職・オフィスワークにこれから挑戦する方に向けた、ITリテラシー「代表的なソフトウェア」の5本目です。ここまでで、調べる・伝える・預ける・話し合うの4つができるようになりました。最後に必要なのが、それを守る技術です。読み終わる頃には、自分が今いくつのパスワードを使い回しているかを画面で数え、その日のうちに1つを作り直せるようになります。
先に結論から。パスワードで一番危ないのは、短さでも記号の少なさでもなく「使い回し」です。1つの流出が、そのまま他のすべての入口の流出になります。そして解決策は、覚える力を鍛えることではありません。覚えるのをやめて、道具に持たせることです。
使い回しは「家も車もロッカーも同じ鍵」の状態
パスワードは扉の鍵にあたります。同じパスワードをあちこちで使うのは、家の玄関も、車も、会社のロッカーも、銀行の貸金庫も、全部1本の鍵で開くようにしてあるのと同じです。便利なのは間違いありません。持ち歩く鍵が1本で済みます。
けれど、その1本をどこかで落とした瞬間に何が起きるかを考えてみてください。拾った人は、順番にすべての扉を試すだけです。パスワードの世界では、この「順番に試す」を機械が1秒間に何千回も行います。
1か所の流出が、他の扉に持ち込まれる
どこかの通販サイトから、メールアドレスとパスワードの組み合わせが流出したとします。悪意のある人は、その組み合わせをそのまま持って、別のサービスの入口で片っ端から試します。使い回していれば、そのうちのどれかが開きます。開いた先が会社の管理画面だったとき、被害を受けるのはあなた1人ではありません。
だからこそ、覚えておくべき順番は「同じにしない」が先、「複雑にする」は後です。
強さを決めるのは、記号より長さ
「大文字・小文字・数字・記号を混ぜる」は昔からよく言われますが、8文字では混ぜても総当たりが届きます。今の基準は長さです。目安は16文字以上。
とはいえ、記号だらけの16文字は覚えられません。そこで使うのが関係のない言葉を4つつなぐやり方です。「あさごはん・きゅうり・でんしゃ・7」をローマ字でつなげば、それだけで20文字を超えます。意味のつながらない言葉ほど、他人には推測できません。
覚えるのをやめて、道具に持たせる
サービスごとに違う16文字を全部覚えるのは無理です。ここで使うのがパスワード管理ツール。Chromeなら右上の点が3つ並んだボタンから「パスワードと自動入力」を開き、「Googleパスワードマネージャー」で保存と自動入力ができます。新規登録の画面でパスワード欄を押すと、自動で強いものを提案してくれるので、それを選んで保存するだけです。
自分が覚えるのは、その管理ツールを開くための1つだけ。鍵を1本ずつ持ち歩くのをやめて、鍵束と、その鍵束を開ける1本を持つ形にする——これが今の標準の持ち方です。
二段階認証は、扉のチェーンロック
二段階認証は、パスワードが合っていても、もう一段の確認がないと入れなくする仕組みです。玄関のチェーンロックと同じで、鍵が合っていてもドアは細くしか開きません。
設定の場所はどのサービスもほぼ同じです。「設定」を開き、「セキュリティ」または「アカウント」の中にある「2段階認証」を選び、スマートフォンの番号か認証アプリを登録します。所要時間は3分ほど。会社のメールと、給与や個人情報を扱う管理画面だけでも先に設定しておくと、守りの厚みがはっきり変わります。
私たちが、媒体ごとに鍵を分け直した日
私たちCCコミュニケーションズは、複数の求人媒体の管理画面を日常的に使います。その中には、応募してくださった方の名前・電話番号・これまでの職歴が入っています。ご本人が私たちを信じて預けてくださった情報です。
以前、担当者が「覚えやすいから」と3つの媒体で同じパスワードを使っていたことが分かりました。その場で全部を別々に作り直し、二段階認証も入れました。かかった時間は30分です。もしその前に1つでも破られていたら、30分では取り返せませんでした。
守っているのは、自分のものではありません
パスワードを分けるのも、16文字にするのも、面倒な作業です。それでもやるのは、自分のアカウントを守るためだけではありません。その扉の向こうにあるのは、お客様の契約内容であり、応募者の連絡先であり、一緒に働く仲間の給与です。
私たちにとって情報を守ることは、規則を守ることではなく「預けてくれた人との約束を守ること」です。今日変える1つのパスワードは、その約束の一番小さくて確実な形です。
今日からできる、たった1つのこと
パスワードチェックアップを開いて、使い回している件数を数え、いちばん大事な1つを変える
Chromeの右上にある点が3つ並んだボタンを押し、「パスワードと自動入力」から「Googleパスワードマネージャー」を開きます。左の「チェックアップ」を押すと、「同じパスワードを使い回しています」と表示される件数が出ます。まずその数字を数えてください。次に、その中から自分にとっていちばん大事なサービスを1つだけ選び、そのサービスの設定画面でパスワードを変更します。新しいものは、関係のない言葉を4つつないだ16文字以上。1日1つ変えれば、1週間で7つの扉の鍵が別々になります。
まとめ
パスワードで最初に直すのは、複雑さではなく使い回しです。長さは16文字、作り方は関係のない言葉を4つつなぐ。覚えるのは管理ツールを開く1つだけにして、大事なサービスには二段階認証を入れる。まずはチェックアップの画面を開いて、使い回している数を自分の目で数えるところから始めてください。

