顧客の「その先」まで見る|顧客志向は、言いなりではない

オフィスビルの外観
  1. 営業コラム
  2. 営業
  3. 顧客理解
  4. 顧客の「その先」まで見る|顧客志向は、言いなりではない

顧客の「その先」まで見る|顧客志向は、言いなりではない

顧客志向は、
言いなりじゃない。

BEYOND THE ORDER.

「顧客志向」とは、言われたことを何でも聞くことだと思っていませんか。

本当の顧客志向は、顧客の「その先」まで見て、双方が勝てる形を一緒に考えることです。

「顧客志向」と聞くと、お客様の言うことに全部うなずくことだと感じるかもしれません。この記事は、法人営業に興味がある未経験の方や、初めて自分のお客様を持った若手に向けた実践編です。読み終える頃には、依頼を受けたときに何を確かめればいいかが順番で分かり、ときに「それはやらない方がいい」と言える理由まで説明できるようになります。

言われたとおりに流すだけなら、それは伝言係

お客様の言葉を、そのまま社内へ流す。社内の答えを、そのままお客様へ返す。この往復だけをしている状態を、私たちは営業ではなく伝言係と呼んでいます。伝言係は速くて正確ですが、そこに私たちの価値はありません。CCが考える顧客志向は、「お客様を深く知り、自分の意思を持ち、お客様と自社の双方を勝たせること」です。だから依頼を受けたら、返事をする前に必ず4つの段を通します。

依頼を受けてから、提案に変わるまでの4段 1 そのまま受け取る 相手の言葉を、省略せずに書き留める 2 背景と目的を探す なぜ今それが必要になったのかを聞く 3 自分の考えを持つ 「自分ならこうする」を1つ用意する 4 別案まで出す 言われた案と、もう1案を並べて渡す
受け取って、背景を聞いて、自分の考えを持って、別案まで並べる。ここまでが1セットです。

例え話:美容室で「5センチ切ってください」と言われたら

美容師さんに「5センチ切ってください」と伝えたとします。言われたとおり正確に5センチ切るのも、間違いではありません。でも上手な美容師さんは、その前に一言聞きます。「何かご予定がありますか?」——もし答えが「来週、結婚式で写真を撮るんです」だったら、切る長さは変わるはずです。お客様が本当に欲しいのは5センチという数字ではなく、当日きれいに写る自分だからです。営業の依頼も、まったく同じ構造をしています。

見るのは、目の前の担当者の「その先」

本当の課題は、たいてい目の前の担当者の言葉の外側にあります。その会社はどこで利益を出しているのか、業界で今何が起きているのか、競合はどう動いているのか。そして一番大事なのが、その会社のお客様——つまり「顧客の顧客」が、どんな体験をしているかです。ここまで見て初めて、表面の要望の奥にある構造が見えてきます。

見るのは、目の前の1人だけではない 担当者 その会社 その会社のお客様 担当者が見ている景色 今期の予算・上司への説明・締切 会社が見ている景色 利益の出し方・競合・人手の事情 その先のお客様が見ている景色 売り場・待ち時間・受けた説明
同じ依頼でも、どの層まで見えているかで、出せる提案が変わります。

現場のリアル:「スタッフを10人出してください」

CCの営業がこう言われたとき、そのまま10人集めにいくことはしません。まず聞くのは「最終的に、どんな状態にしたいですか」です。以前、ある売り場でこの質問をしたところ、返ってきたのは「土日の夕方だけレジが詰まって、お客様が並んでしまう」という答えでした。必要だったのは終日10人ではなく、その時間帯に厚く入る人員と、並び方の変更でした。人数を減らした提案なので、その場の売上は下がります。それでも、次の相談は同じ担当者から届きました。

気づいた課題は、担当者が動かせる大きさに切る

その先まで見ていくと、お客様自身が気づいていない課題も見えてきます。ただし、見つけたものをそのまま渡してはいけません。「御社は採用の仕組みごと変えた方がいい」と言われても、目の前の担当者にその権限がなければ、その言葉は宙に浮いたままです。私たちは、大きな課題を見つけたら、必ずその人が来週から動かせる大きさまで切り分けて渡します。動かせる一手に変えて初めて、指摘は提案になります。

ときには「やらない方がいいと思います」と伝える

自社の売上になる案件でも、必要ないと考えたときは、そのまま伝えます。これは正義感の話ではなく、判断の順番が決まっているからです。

迷ったときの、判断の並び順 1. 会社の利益 長期で成長し続けられるか 2. クライアントの利益 その会社の成功につながるか 3. 従業員の利益 働く人が力を出せるか 4. 協力会社の利益 一緒に組む相手も残るか 1の「会社の利益」は短期売上ではない 今月の数字より、来年も呼ばれる状態を選ぶ
1番は会社の利益。ただしそれは「今月」ではなく「来年も呼ばれること」を指します。

短期の売上を1件失っても、その誠実さが次の相談につながるなら、長い目では会社の利益になります。逆に、要らないものを売って喜ばれなかった案件は、数字に残っても関係には残りません。

「言いなり」と何が違うのか

言いなり顧客志向
聞くこと何が欲しいか最終的にどうなりたいか
自分の意見持たない1つ用意して並べる
不要だと思ったときそのまま受ける理由を添えて止める
見ている範囲目の前の担当者その会社と、その先のお客様

決めるのはお客様です。私たちの仕事は、決めるために必要な情報と、自分たちの見解を、隠さず机の上に出すことまで。そこから先は委ねます。

その先の人が良くなって、はじめて成功

私たちが人を出すのは、人数を満たすためではありません。売り場に立ったスタッフの一言で、買い物に来た方が迷わずに帰れる。その体験があって初めて、ご担当者は社内で「この施策はうまくいった」と報告できます。顧客志向とは、目の前の1人に好かれることではなく、その先にいる人まで含めて良くすることです。だから、ときには耳の痛い提案もします。

私たち ご担当者 その先のお客様
見ているのは、いつも一番奥にいる人です。

今日からできる、たった1つのこと

TODAY'S ACTION

最近受けた依頼を1つ選び、「その依頼の先にいる人」を3人書き出す

仕事の依頼でも、アルバイトの指示でも、家族からの頼まれごとでもかまいません。1つ選んで、紙に「この依頼が終わったあと、影響を受ける人」を3人ぶん書きます。頼んだ本人、その上司、その先のお客様——という具合です。3人ぶん書けたら、最後に「その3人にとって一番良い形は、本当に頼まれたとおりですか」と自分に聞いてみてください。

まとめ

顧客志向は、言いなりになることではありません。依頼をそのまま流さず、背景を聞き、自分の考えを持ち、別案まで並べる。見る範囲は目の前の担当者だけでなく、その会社と、その先のお客様まで。必要なら「やらない方がいい」と言う。それができる営業が、次も最初に相談される営業です。

この考え方の土台は営業とは何かにあります。相手を深く知る手順は顧客理解の技術、自分の足で確かめる話は営業が現場を見る理由へ。