顧客の「その先」まで見る|顧客志向は、言いなりではない

顧客の「その先」まで見る|顧客志向は、言いなりではない
顧客志向は、
言いなりじゃない。
BEYOND THE ORDER.
「顧客志向」とは、言われたことを何でも聞くことだと思っていませんか。
本当の顧客志向は、顧客の「その先」まで見て、双方が勝てる形を一緒に考えることです。
「顧客志向」と聞くと、お客様の言うことに全部うなずくことだと感じるかもしれません。この記事は、法人営業に興味がある未経験の方や、初めて自分のお客様を持った若手に向けた実践編です。読み終える頃には、依頼を受けたときに何を確かめればいいかが順番で分かり、ときに「それはやらない方がいい」と言える理由まで説明できるようになります。
言われたとおりに流すだけなら、それは伝言係
お客様の言葉を、そのまま社内へ流す。社内の答えを、そのままお客様へ返す。この往復だけをしている状態を、私たちは営業ではなく伝言係と呼んでいます。伝言係は速くて正確ですが、そこに私たちの価値はありません。CCが考える顧客志向は、「お客様を深く知り、自分の意思を持ち、お客様と自社の双方を勝たせること」です。だから依頼を受けたら、返事をする前に必ず4つの段を通します。
例え話:美容室で「5センチ切ってください」と言われたら
美容師さんに「5センチ切ってください」と伝えたとします。言われたとおり正確に5センチ切るのも、間違いではありません。でも上手な美容師さんは、その前に一言聞きます。「何かご予定がありますか?」——もし答えが「来週、結婚式で写真を撮るんです」だったら、切る長さは変わるはずです。お客様が本当に欲しいのは5センチという数字ではなく、当日きれいに写る自分だからです。営業の依頼も、まったく同じ構造をしています。
見るのは、目の前の担当者の「その先」
本当の課題は、たいてい目の前の担当者の言葉の外側にあります。その会社はどこで利益を出しているのか、業界で今何が起きているのか、競合はどう動いているのか。そして一番大事なのが、その会社のお客様——つまり「顧客の顧客」が、どんな体験をしているかです。ここまで見て初めて、表面の要望の奥にある構造が見えてきます。
現場のリアル:「スタッフを10人出してください」
CCの営業がこう言われたとき、そのまま10人集めにいくことはしません。まず聞くのは「最終的に、どんな状態にしたいですか」です。以前、ある売り場でこの質問をしたところ、返ってきたのは「土日の夕方だけレジが詰まって、お客様が並んでしまう」という答えでした。必要だったのは終日10人ではなく、その時間帯に厚く入る人員と、並び方の変更でした。人数を減らした提案なので、その場の売上は下がります。それでも、次の相談は同じ担当者から届きました。
気づいた課題は、担当者が動かせる大きさに切る
その先まで見ていくと、お客様自身が気づいていない課題も見えてきます。ただし、見つけたものをそのまま渡してはいけません。「御社は採用の仕組みごと変えた方がいい」と言われても、目の前の担当者にその権限がなければ、その言葉は宙に浮いたままです。私たちは、大きな課題を見つけたら、必ずその人が来週から動かせる大きさまで切り分けて渡します。動かせる一手に変えて初めて、指摘は提案になります。
ときには「やらない方がいいと思います」と伝える
自社の売上になる案件でも、必要ないと考えたときは、そのまま伝えます。これは正義感の話ではなく、判断の順番が決まっているからです。
短期の売上を1件失っても、その誠実さが次の相談につながるなら、長い目では会社の利益になります。逆に、要らないものを売って喜ばれなかった案件は、数字に残っても関係には残りません。
「言いなり」と何が違うのか
| 言いなり | 顧客志向 | |
|---|---|---|
| 聞くこと | 何が欲しいか | 最終的にどうなりたいか |
| 自分の意見 | 持たない | 1つ用意して並べる |
| 不要だと思ったとき | そのまま受ける | 理由を添えて止める |
| 見ている範囲 | 目の前の担当者 | その会社と、その先のお客様 |
決めるのはお客様です。私たちの仕事は、決めるために必要な情報と、自分たちの見解を、隠さず机の上に出すことまで。そこから先は委ねます。
その先の人が良くなって、はじめて成功
私たちが人を出すのは、人数を満たすためではありません。売り場に立ったスタッフの一言で、買い物に来た方が迷わずに帰れる。その体験があって初めて、ご担当者は社内で「この施策はうまくいった」と報告できます。顧客志向とは、目の前の1人に好かれることではなく、その先にいる人まで含めて良くすることです。だから、ときには耳の痛い提案もします。
今日からできる、たった1つのこと
最近受けた依頼を1つ選び、「その依頼の先にいる人」を3人書き出す
仕事の依頼でも、アルバイトの指示でも、家族からの頼まれごとでもかまいません。1つ選んで、紙に「この依頼が終わったあと、影響を受ける人」を3人ぶん書きます。頼んだ本人、その上司、その先のお客様——という具合です。3人ぶん書けたら、最後に「その3人にとって一番良い形は、本当に頼まれたとおりですか」と自分に聞いてみてください。
まとめ
顧客志向は、言いなりになることではありません。依頼をそのまま流さず、背景を聞き、自分の考えを持ち、別案まで並べる。見る範囲は目の前の担当者だけでなく、その会社と、その先のお客様まで。必要なら「やらない方がいい」と言う。それができる営業が、次も最初に相談される営業です。
この考え方の土台は営業とは何かにあります。相手を深く知る手順は顧客理解の技術、自分の足で確かめる話は営業が現場を見る理由へ。

