「質問する営業」から卒業|会話を組み立てて本音を引き出すヒアリング

「質問する営業」から卒業|会話を組み立てて本音を引き出すヒアリング
質問を並べるより、
会話をつなげる。
HEARING
「今のままで大丈夫です」で、終わらせない。
本音は、質問の数ではなく往復の回数から出てきます。
「今のままで大丈夫です」。外販イベントの現場で、1日に何度も聞く言葉です。この記事は、声のかけ方と最初の一言までは通用するようになった中級のスタッフに向けたものです。読み終わると、断り文句のあとに会話を続ける4つの手順と、うまくいっているかどうかの見分け方が手に入ります。
最初に結論
ヒアリングで大切なのは、質問をたくさんすることではありません。お客様が安心して本音を話せる空気をつくり、返ってきた答えを材料に、次の会話を組み立てることです。お客様のほうから質問が返ってくるようになれば、信頼関係ができ始めているサインです。
「大丈夫です」で終わらせない理由
会場では、多くのお客様が最初に「今のままで大丈夫です」と断られます。この一言で商談を終えてしまうのは、もったいないことです。お客様自身も気づいていない困りごとが隠れていることがあるからです。
私たちがヒアリングをするのは、契約をいただくためではありません。今より困らない状態でお帰りいただくためです。ここで引き下がれば、電池が昼までもたない端末を、あと1年使い続ける方がいるかもしれません。聞くことは、その方の1年を変える行為です。
会話は、キャッチボールで考える
ヒアリングをキャッチボールに置き換えると分かりやすくなります。質問を続けて投げるのは、速い球を10球続けて投げるのと同じです。相手は捕るだけで手一杯になり、投げ返す余裕がありません。ゆっくり投げて、返ってきた球を受け止めて、また投げる。この往復ができて初めて会話になります。
会話を組み立てる4つのステップ
現場で使う順番は、次の4つです。
- STEP1 現在の利用状況を聞く:「普段はどちらの会社をお使いですか」「何年くらいお使いですか」。考えなくても答えられる質問から入ります
- STEP2 答えにリアクションを返す:「そんなに長く使われているんですね」。この一言があるだけで、お客様は次の話をしやすくなります
- STEP3 困りごとを具体的に聞く:「困っていることはありますか」ではなく「端末を長く使われていますが、不具合や困りごとはありませんか」。範囲を狭めると答えが出ます
- STEP4 困りごとを提案につなげる:「一度、今の状態と比べてみませんか」。料金の説明から始めず、解決できる可能性があることだけを先に伝えます
リアクションのない質問だけを並べると、会話ではなくアンケート用紙になります。お客様は「答えさせられている」と感じ、そこで口が重くなります。なお、料金やサービスの内容は、話す前に必ず最新の公式情報を確認します。
現場での会話例
「実は、電池の減りが早くて…」が出てきて、はじめて本当の困りごとが分かります。ここから、そのお客様の使い方に合わせた比較に入ります。最初の「大丈夫です」は断りではなく、会話の入口です。
よくある失敗と、その直し方
知識だけを一方的に伝えてしまう
料金やサービスの内容を続けて説明すると、お客様は話についていけなくなり、途中で興味を失います。1つ説明したら「ここまでで分かりにくいところはありませんか」と確認してから次に進みます。
「できません」で終わらせてしまう
現場での失敗です。お客様から「データ移行やアプリの設定もお願いしたい」と言われたとき、「有料サービスなので対応できません」とだけ答えました。結果は「それなら機種変更しない」。契約も、その方の困りごとも、どちらも残ったままになりました。
今なら、有料サポートで何をしてもらえるのかを伝えたうえで、ご自身でできそうな設定は口頭で手順を案内します。同じ「有料です」でも、渡し方で結果が変わります。決めるのはお客様で、私たちの仕事は選べる材料をそろえることです。
できる人が見ているもの
できる人は、質問を並べていません。お客様の答えを材料に、次の会話を組み立てています。「どちらの会社ですか」から「何年お使いですか」、「そんなに長いんですね」から「月々のお支払いは5,000円くらいですか」、そして「使い方によっては、もっとお安くできる可能性があります」。答えが次の質問を決めています。
そして、お客様から「それはいくらですか」「どう変わるんですか」と質問が返ってきた状態を、一つの成功の目安にしています。質問が返ってくるのは、その話がお客様の中で自分ごとに変わった合図です。
往復の中から出る。
「今のままで大丈夫です」から4往復。そこで出てきた「実は、電池の減りが早くて…」の一言が、提案の出発点になります。質問をいくつ用意したかではなく、何回やり取りできたかです。
今日からできる、たった1つのこと
今日「今のままで大丈夫です」と言われたお客様3人に、そのあと1問だけ「普段はどちらの会社をお使いですか」と聞く。
断られたあとに続ける一言は、その場では出てきません。先に決めておくものです。今日、断られたお客様3人に、商品の話をせず「普段はどちらの会社をお使いですか」だけを聞いてください。答えが返ってきたら「そんなに長く使われているんですね」と受け止めるところまでで止めます。提案はしません。3人試すと、断り文句のあとにも会話が続くことが体感できます。続いた1人の中に、電池や通信量で困っている方が必ずいます。
まとめ
- ヒアリングは質問の技術ではなく、話しやすい空気をつくり会話を組み立てる技術
- 「今のままで大丈夫です」は断りではなく、会話の入口
- 利用状況を聞く、リアクションを返す、困りごとを具体的に聞く、比較を提案する。この順番で進める
- 一方的に説明せず、1つ話すごとに分かりにくいところがないか確認する
- 「できません」で終わらせず、お客様が選べる形にして渡す
- お客様から質問が返ってきたら、うまくいっているサイン
理解度チェック
研修の内容が身についているか、5問で確認します。答えは下にあります。
- お客様から「今のままで大丈夫です」と言われたら、すぐに商談を終えるべきでしょうか。
- 「困りごとはありますか」よりも「端末を長く使われていますが、不具合はありませんか」と聞くと、何が変わりますか。
- お客様から質問が返ってくるようになった状態は、何を意味していますか。
- 「有料サービスなのでできません」だけを伝えることが望ましくない理由は何ですか。
- ヒアリングが上手い人は、質問を並べることと会話を組み立てることの、どちらをしていますか。
解答
- 問1:終えません。利用状況を1問聞くところから会話を続けます
- 問2:範囲が狭くなり、お客様が答えを思い出しやすくなります
- 問3:その話がお客様の自分ごとに変わり、信頼関係ができ始めています
- 問4:できない理由だけが残り、お客様に選ぶ材料が渡らないからです
- 問5:会話を組み立てています。答えを材料にして次の一言を決めています

