Galaxyの歴史①|乾物屋から始まり、携帯電話15万台を燃やすまで

Galaxyの歴史①|乾物屋から始まり、携帯電話15万台を燃やすまで
品質は、
燃やして手に入れた。
THE HISTORY OF GALAXY | 第1部
「他社と何が違うんですか」
そう聞かれて、答えに詰まったことはないでしょうか。
スペックは調べれば出てきます。調べても出てこないのは、そのメーカーが何を捨ててきたかです。
今日お伝えしたいことは1つです。サムスンは、品質で一度死にかけた会社です。
1995年、この会社は自社の新品の携帯電話を15万台、社員2000人の目の前で燃やしました。
なぜそんなことをしたのか。
そこに、店頭で使える話がまるごと入っています。
この記事は、携帯販売の現場でGalaxyを扱う方に向けた3部作の第1部です。年号は覚えなくて構いません。持ち帰るのは1995年の1つだけです。
この記事の内容を、2人の会話で解説します
AIが記事を読み解いて対話形式にした音声です。話しているのは実在の社員ではありません。
サムスンは、電機メーカーとして生まれていない
創業は1938年。場所は韓国南部の大邱(テグ)。創業者は李秉喆(イ・ビョンチョル、1910〜1987)。
開いたのは「三星商会」という商店です。元手は家族から受け取った3万ウォン。扱っていたのは乾物と野菜、そして麺でした。
半導体でもスマホでもありません。食べ物です。
社名の「三星」も、そのまま「三つの星」という意味です。壮大な技術思想ではありません。
最初は、日本のメーカーに教わる側だった
サムスン電子ができたのは1969年1月。同じ年の12月、日本の三洋電機・住友商事と合弁会社をつくります。
そして1970年、白黒テレビの生産を始めました。
自前の技術で立ち上がったのではありません。組んで、教わって、覚えたのが始まりです。
のちに世界一になる会社が、50年前は完全な後追いでした。
初めての携帯電話は、自国でも選ばれなかった
最初の携帯電話「SH-100」を出したのは1988年、ソウル五輪の年です。
当時の韓国市場は、モトローラが9割以上を握っていました。
自国メーカーなのに、自国で売れない。これが数年続きます。
会社を変えたのは、洗濯機のフタだった
1987年、創業者の死去にともなって李健熙(イ・ゴンヒ)が会長に就きます。
あるとき、彼は自社工場を撮った映像を見ました。
洗濯機のフタの寸法が合っていない。作業員はナイフでフタを削り、無理やりはめ込んでいました。
問題は、削っていたことではありません。それが、その現場の日常だったことです。
1993年6月7日、李健熙はドイツ・フランクフルトのケンピンスキーホテルに、幹部ら約200人を集めます。
妻と子ども以外、すべて変えろ。
数を追う経営から、質を追う経営へ。のちに「新経営」と呼ばれる方針転換です。
言葉では変わらなかった。だから燃やした
ところが現場は変わりませんでした。
1994年、発売を急いだ携帯電話の不良率は11.8%。
9台売れば、1台は動かない計算です。10人接客して、1人にハズレを渡す。店頭に立ったことがある人なら、この数字の怖さが分かるはずです。
李健熙が年始の贈り物として配った自社の携帯電話が、そもそも動かなかったという話も残っています。
1995年3月、亀尾(グミ)工場。社員およそ2000人が集められた広場に、不良品の携帯電話15万台が積み上げられました。
「品質確保」と書かれたハチマキを巻いた10人が、ハンマーでそれを叩き壊します。そして、火をつけました。
大企業だから捨てられたんだ。そう思う人もいるでしょう。違います。
当時のサムスンは、自国の市場を9割モトローラに取られていた側です。捨てる余裕のある会社ではありませんでした。
この年、サムスンは韓国国内のシェアで前年の4位から首位に立ちます。
アニコールが売っていたのは、性能ではない
1994年、サムスンは携帯電話に「アニコール(Anycall)」という名前をつけます。
スローガンは「韓国の地形に強い」。
山が多く電波が届きにくい国で、どこでもつながることを正面から出しました。
李健熙は、ボタンの並びにまで口を出したと伝えられます。通話ボタンと終了ボタンを上に持ってこい、と。
会長が、キーの位置を指示する。それくらいの距離まで現場に降りていたということです。
ここは、そのまま店頭の話です。
お客様が気にしているのは、カタログの数字ではありません。自分の生活で困らないかどうかです。
今日のまとめ
- サムスンは1938年に食品を扱う商店として始まった。電機は後から覚えた
- 1993年の宣言では現場は変わらず、1995年に15万台を燃やして初めて変わった
- 品質は、スペックではなく「一度失敗して作り直した」という事実で伝わる
サムスンは、品質を宣言で手に入れていません。
燃やして手に入れました。
その会社の端末が、いまあなたの店頭に並んでいます。
第2部では、そのGalaxyを実際につくった人の話をします。
名門大学から新卒で入った人ではありません。
「サムスンって韓国の会社でしょ?」への返しを、2文だけ用意する
次にそう言われたら、この2文を使ってください。「はい、韓国のメーカーです。もともとは1938年に食品を扱う商店から始まった会社で、1995年に自社の不良品15万台を社員の前で燃やして、品質をつくり直した歴史があります」。出勤前に声に出して3回読んでおくと、その日のうちに口から出ます。

